特集

凱旋門賞の歴史

  • 今年で95回目を迎える本競走は、3歳馬のための国際的なクラシック競走として成功を収めていたパリ大賞(1863年に創設)にならい、古馬のための大競走として1920年に創設された。当初は国外(おもにイギリス)のトップホースが参戦しないなど本来の目的を果たせずにいたが、1949年に大幅な賞金増が決定。これにより当時の世界最高賞金競走となり、国際的な権威が高まるとともに世界から注目を集めるようになった。

    過去の勝ち馬には、競走馬として16戦16勝の成績を収め種牡馬としても大成したリボー(1955、1956年)、レイティングで145ポンドを獲得しヨーロッパ競馬史上歴代1位(当時)となったシーバード(1965年)、初のヨーロッパ三大競走完全制覇を果たしたミルリーフ(1971年)、インターナショナル・クラシフィケーションで過去最高となる141ポンド(当時)を記録したダンシングブレーヴ(1986年)などがいる。

    近年では、母アーバンシーと凱旋門賞母子制覇を果たしたシーザスターズ(2009年)、現在日本で種牡馬として繋養されているワークフォース(2010年)、史上初となる凱旋門賞3連覇の偉業に挑戦した名牝トレヴ(2013、2014年)、昨年のカルティエ賞年度代表馬に輝いたゴールデンホーン(2015年)など。なお、長い歴史の中でいまだに欧州調教馬しか優勝していない。

【日本馬の挑戦】

  • 94回の歴史のなかで、これまで日本調教馬は17頭が挑戦しているが、いまだに勝ち馬はいない。先陣を切ったのは第48回のスピードシンボリ(1969年)で、7歳(旧表記)の欧州遠征の最終戦として出走。しかし、着外に敗れている。その後、第51回メジロムサシ(1972年)、第65回シリウスシンボリ(1986年)が挑むも、ともにフタ桁着順に敗退。それからしばらく、日本馬の凱旋門賞参戦は途絶えることに。

    日本馬による4度目の挑戦となったのが第78回エルコンドルパサー(1999年)だ。5歳シーズン(旧表記)となったこの年は長期の欧州遠征を敢行し、サンクルー大賞、フォワ賞と連勝。モンジュー、デイラミと“3強”を形成し、有力馬の1頭として本番を迎える。好スタートを切ったエルコンドルパサーは、押し出されるようにハナへ。現地の馬が嫌って回避するほど極端な不良馬場の中、他馬からプレッシャーをかけられる厳しい展開になるも、直線では後続を引き離しセーフティリードを築いたか……と思われたのも束の間、後に稀代の重馬場巧者として知られることとなるモンジューが次元の違う脚で抜け出しを図り、残り50mで逆転。エルコンドルパサーも必死に食い下がったが半馬身ほどの差がどうしても縮まらず、そのまま2着でゴール。悲願達成とはならなかった。

    第85回では無敗の三冠馬ディープインパクト(2006年)が挑戦。前年末の有馬記念でキャリア初の黒星を喫したディープインパクトだったが、4歳になると阪神大賞典、天皇賞・春、宝塚記念と3連勝を果たし、勇躍フランスへ。この年は、前年の覇者ハリケーンラン、前年のブリーダーズCターフの勝ち馬シロッコが顔を揃え、これにディープインパクトを含めた3頭が人気を集めた。ゲートが開くと先団につけたディープインパクトは、直線の半ばでいったんは先頭に立つシーンを作ったが、そこから伸び切れずレイルリンク、プライドの2頭に交わされ3着入線で終わった。なお、同馬はレース後に行われた尿検査にて禁止薬物が検出されたため、失格処分となっている。

    グランプリホースであるナカヤマフェスタ(2010年)が参戦したのは第89回。このときは前哨戦のフォワ賞(2着)からの転戦だった。同馬を管理するのは美浦・二ノ宮敬宇調教師、そして鞍上は蛯名正義騎手。これは11年前、2着に敗れたエルコンドルパサーと同じタッグであり、リベンジ戦としても注目を集めた。中団馬群の中でジッと我慢し脚を溜めたナカヤマフェスタは、直線では外から力強い伸び脚を披露。そこからワークフォースとの追い比べになり、一度は前に出たものの、最後はわずかに及ばず2着でゴール。またしても世界の壁の高さを痛感させられる結果となった。

    第91回、そして第92回と2年連続で挑んだのが中央競馬史上7頭目の三冠馬オルフェーヴル(2012、2013年)である。4歳シーズンだった2012年は、プレップレースのフォワ賞を勝利して本番へ向かった。中団の外めにつけたオルフェーヴルはフォルスストレートをなんなく抜けて直線へ入ると、鞍上C.スミヨン騎手からのゴーサインに鋭く反応。一気に先団を飲み込み、残り300mで単独の先頭に立つ。「ついにやったか!」と多くの日本競馬ファンが思っただろう。しかし、そこからササり気味に内へヨレると、地元フランスの3歳牝馬ソレミアがジワジワと詰め寄ってくる。結局、これにゴール寸前で差し返され、快挙とはならなかった。5歳シーズンも遠征したオルフェーヴルだったが、3歳牝馬トレヴに千切られてフィニッシュ。大きく引き離された2着が精一杯だった。

    なお、これまでに凱旋門賞に挑戦した日本調教馬は以下のとおり。

見どころ

  • ロンシャン競馬場の改修工事により、シャンティイ競馬場で開催される今年の凱旋門賞。これがどのような影響を及ぼすかが鍵となるが、シャンティイは3コーナーから下り→4コーナーから直線まで上り→ゴールまで緩やかな上りというコース形態。ロンシャン最大の特徴である“フォルスストレート(偽りの直線)”がないため、コースが持つ特殊性は極端なものではなくなった。日本から参戦するマカヒキにとって、日本の競馬場に比較的近い条件で臨める点は大きなアドバンテージと言えるだろう。

    そのマカヒキは、プレップレースのニエル賞を快勝。有力馬の回避でくみしやすいメンバー構成だったことは確かだが、初体験となったシャンティイの芝を難なくこなしてみせた。同条件2戦目での上積みも見込めることから、日本競馬界の悲願達成に向け視界は良好だ。

    迎え撃つ外国馬も多士済々。なかでもポストポンド(英)は競馬ファンにとって聞き覚えのある馬名ではないだろうか。ドバイシーマクラシックで2冠馬ドゥラメンテを下し、その後もコロネーションC→英インターナショナルSと連勝街道を驀進中。英ブックメーカー・ウィリアムヒル社のオッズでも1番人気の支持を集めている。なお、同馬の父ドバウィは2016年の種付け料が22万5000ポンド(日本円で約4200万円)という破格の設定。ポストボンドが凱旋門賞制覇となると、その価格はさらに跳ね上がるかもしれない。

    マカヒキ同様、自国のダービー馬に輝いたアルマンゾル(仏)も有力馬の1頭として数えられる。ブリーダーズCターフを制したファウンド(愛)や英・愛両ダービー制覇の3歳馬ハーザンド(愛)など強豪が揃った愛チャンピオンSで大外一気の豪脚を繰り出し勝利。昨年の凱旋門賞勝ち馬ゴールデンホーンと同じローテーションで臨む3歳馬が、虎視眈々とその再現を狙う。

    ラムタラやザルカヴァ、トレヴなど無敗で頂点に立つ歴史的名馬を生み出してきた凱旋門賞。今年、その偉業に挑むのが8戦無敗の3歳牝馬ラクレソニエール(仏)だ。先に挙げたアルマンゾルとの比較で、シャンティイでの出走経験がある点はプラス材料。残された課題は2400mという未知の距離への対応だが、その壁を乗り越えたとき、新たなスーパーホースの誕生を目の当たりにすることとなるだろう。

    また、このレースでは日本国内で初となる海外競馬の競走における勝馬投票券の発売が実施される。これまでは現地に行かない限り“観るだけのレース”だった凱旋門賞に今年から“予想”という新たな楽しみが加わった。そこで、ここからは予想に役立ついくつかのデータをお伝えしていきたい。

【過去10年の凱旋門賞データ】

  • ・ローテーション
    過去10年の勝ち馬10頭中、8頭が前走ニエル賞、ヴェルメイユ賞、愛チャンピオンSのいずれかに該当。勝ち馬に予想の焦点を絞った場合、この3レースから臨む馬が優位と言えそうだ。また、このうち5頭は3歳馬。古馬との間に3.5キロの斤量差がある凱旋門賞は3歳馬有利が定説となっており、2013年を例に取ると3歳牝馬トレヴと4歳牡馬オルフェーヴルの斤量差は5キロ。もちろん実力あっての話だが、この斤量差は見逃せない。

    今年の凱旋門賞でこの3レースから臨む主な有力馬はマカヒキ(日)、レフトハンド(仏)、アルマンゾル(仏、※回避)など。なかでも3歳牝馬レフトハンドは近5年で3勝と躍進が目立つ前走ヴェルメイユ賞組。同レースを制した勢いは侮れず、斤量面も加味すれば本番でもダークホース的存在となりそうだ。
  • ・血統
    日本競馬を席巻するサンデーサイレンス系。それと同じように、欧州競馬を席巻するのがサドラーズウェルズ系だ。欧州=タフな馬場とイメージされるファンの方は多いかと思われるが、その馬場はスタミナと持久力に優れた同系統にとってうってつけの条件。過去の凱旋門賞を見ても、この系統を父または母父に引く馬が9年連続で連対を確保しており、欧州の馬場における特殊性が垣間見える。

    そして、凱旋門賞を得意とするのはサドラーズウェルズ系に限らない。ダンチヒの系統を父または母父に引く馬は過去10年の同レースにおいて7勝2着6回。連対を果たせなかったのは2010年のみと、こちらも素晴らしい成績を残している。

    今年の凱旋門賞において、この2大系統を父または母父に引く主な有力馬はラクレソニエール(仏、※回避)、マインディング(愛、※回避)、ハイランドリール(愛)など。なかでもデビューから11戦すべてで3着内という堅実派マインディングと今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS勝ち馬ハイランドリールは2大系統を父・母父両方に引く馬。凱旋門賞における“黄金配合”を武器に本番でのリベンジを誓う。
  • ・調教師
    凱旋門賞馬を輩出することは、調教師にとってもこの上ない栄誉となる。そんななか、特筆すべき成績を残しているのがA.ファーブル調教師だ。2006年のレイルリンクをはじめ、凱旋門賞で7勝と“凱旋門賞の勝ち方”を知っている稀代の名伯楽は目下4年連続で管理馬が3着内を確保。70歳を迎えてもその手腕は衰えることを知らない。同師が今年送り出す昨年の凱旋門賞3着馬ニューベイは不気味な存在と言えるだろう。

【凱旋門賞の出走馬紹介】

    ※本文中の人気は英ブックメーカー・ウィリアムヒルのもの(9月26日13時現在)

  • 日本馬唯一の出走となるマカヒキは今年の日本ダービー馬。その年のダービー馬が凱旋門賞に挑むのは2013年のキズナ(4着)以来となる。前走のニエル賞はレース中に落鉄するアクシデントがありながらも先行する2頭をゴール手前で差し切って、前哨戦を勝利。現地での評判も高く、凱旋門賞の前売りでは2番人気と上位の評価を受けている。日本競馬の悲願である凱旋門賞制覇を果たすのか注目だ。
  • 現在GI4勝を含む6連勝中と破竹の勢いで勝ち星を積み重ねているポストポンド。ドゥラメンテを破ったドバイシーマクラシックでの活躍も記憶に新しく、日本でも高い認知度を誇る欧州現役最強古馬である。前走のインターナショナルSでは、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを制したハイランドリールを退けており、連勝中の勢いに陰りが見られない。凱旋門賞の前売りでは1番人気と今年の最有力候補と評価されている。
  • 今年の仏ダービー馬アルマンゾルは前哨戦の愛チャンピオンSを大外一気で豪快に差し切って勝利した。昨年のブリーダーズCターフを制したファウンドやGI6勝牝馬のマインディングなど総勢8頭のGIホースを打ち負かしたことで、現地の評価が急上昇している。なお、愛チャンピオンSは昨年の凱旋門賞馬ゴールデンホーンが出走したプレップレースだ。
  • アルマンゾルが制した愛チャンピオンSで1番人気の評価を受けていたのはハーザンド。英ダービーと愛ダービーを連勝したことでポストポンドに次ぐ有力馬として注目されていたが、愛チャンピオンSで8着に終わり評価を落とした。ひと叩きされた今回、父仔制覇が懸かっている同馬の巻き返しが期待される。
  • 斤量面から有利とされる3歳牝馬の大将格は8戦無敗の仏牝馬2冠馬ラクレソニエール。始動戦となった8月のノネット賞では、楽な手応えで抜け出して快勝し、現地でも高い評価を受けている。はたして名牝トレヴ以来となる無敗での凱旋門賞制覇となるのだろうか。なお、主戦はM.デムーロ騎手の弟C.デムーロ騎手だ。
  • これまで18戦5勝、15連対という素晴らしい成績を残している4歳牝馬ファウンド。今期はこれまでGIに5度挑戦して全て2着と、なかなか勝ち切れないレースが続いているが、昨年のブリーダーズCターフで同年の凱旋賞馬ゴールデンホーンを下しているように、その実力は折り紙つきだ。前走の愛チャンピオンSでは、アルマンゾルとの追い比べで僅かに遅れを取ったが、そのレース振りは高く評価されており、敗れはしたものの評価は上昇中。そろそろ1着が欲しいところで、GI3勝目をこの大一番で飾ることができるか?注目が集まる。

【前哨戦プレイバック】

    ※出走可否は9月1日時点

  • ・インターナショナルS
    2016年8月17日 ヨーク競馬場(英) 芝約2092m

    1着 ポストポンド(牡5
    2着 ハイランドリール(牡4)1馬身1/4
    3着 ムタカイエフ(セ5)1馬身
    現在凱旋門賞1番人気に推されているPostponed(ポストポンド)の前走が、こちらのインターナショナルS。レース単体としても世界屈指のレーティングを誇る、イギリスを代表する大レースだ。 (世界の高レーティングGIランキング3位。1位が凱旋門賞、日本トップのJCは7位) 昨夏のキングジョージから5連勝中、うち1戦はドゥラメンテを下したドバイシーマクラシック。当時ドゥラメンテは右前を落鉄した状態だったが、仮に蹄鉄があっても勝てたかどうか・・・・・と思わせるほどのパフォーマンスを見せた勝ち馬のことを覚えている人も多いだろう。

    当然のごとくインターナショナルSも断然人気に推されたが、文字通り他馬を子供扱いする走りで着差以上の大楽勝。前の馬をあっさり交わし、一定の着差を保ったまま悠々1着でゴールを果たした。勝ち馬に抵抗できなかった2着のハイランドリールも、去年の香港ヴァーズや今年のキングジョージを勝っている強豪だったが、ここではなすすべなく敗れている。
  • ・ノネット賞
    2016年8月23日 ドーヴィル競馬場(仏) 芝2000m

    1着 ラクレソニエール(牝3)
    2着 ジェマイエル(牝3)2馬身
    3着 ラカラス(牝3)5馬身
    3歳牝馬限定のGIIであり、ここから凱旋門賞を制した馬は1980年まで遡らなければ出てこない。例年なら前哨戦とはとても言えないレースだが、今年の勝ち馬ラクレソニエールはデビューからここまでGI2勝を含む8戦8勝の無敗馬。次は凱旋門賞に向かうという話が出ており、一部のブックメーカーでは上位人気に支持されている。

    5頭立てのうち1頭がペースメーカーというメンバー構成で、戦前から連勝中のラクレソニエールとナッソーS3着馬ジェマイエルの一騎打ちムード。もちろん人気には大きな開き(ラクレソニエールが1倍台前半、ジェマイエルが8倍前後)があったが、実際のレース内容はオッズ以上の実力差を感じさせるものだった。スローペースの上がり勝負という近年の凱旋門賞に近い展開となった中、ラクレソニエールがあっさり抜け出し楽々2馬身。人気のポストポンドが斤量59.5キロの5歳牡馬、こちらは54.5キロで出走可能な3歳牝馬という点も、逆転候補の一角として有力視される理由だろう。
  • ・アイリッシュチャンピオンS
    2016年9月10日 レパーズタウン競馬場(愛) 芝2000m

    1着 アルマンゾル(牡3)
    2着 ファウンド(牡4)3/4馬身
    3着 マインディング(牝3)2馬身3/4
    3歳牡馬のエース、英愛ダービー馬ハーザンドが古馬と初対戦。今年の英愛3歳牡馬は古馬相手にあまり良い結果が残せず、全体的なレベルが疑問視され始めていたが、“英愛ダービーを制した3歳最強牡馬なら”と1番人気に推されていた。これに並ぶのが牝馬限定GI6勝、牡馬混合GIは初となる英オークス馬マインディング、初めてフランス国外に遠征してきた仏ダービー馬アルマンゾル。凱旋門賞の前哨戦らしく、3歳勢が人気上位を占める形となった。

    ハーザンドは終始手ごたえが悪く、全く見せ場なしの8着。牡馬相手でも馬群を割る根性を見せたマインディングが内から伸びてきたところを、大外から去年のブリーダーズCターフ馬ファウンドと仏ダービー馬アルマンゾルの2頭が強襲。アルマンゾルが切れ味で上回り、追撃を捻じ伏せる形で先着を果たした。2着ファウンドは2歳時にマルセルブサック賞、昨年ブリーダーズCターフを制しているGI2勝馬だが、これが9度目のGI2着。勝ち味に遅いが英愛仏米で安定した成績を残しており、この結果を受けて評価が上昇している。その反面、ハーザンドは評価が急落。また2000年以降最も遅い時計での決着となっており、レース自体のレベルにも疑問符が残る。
  • ・ニエル賞
    2016年9月11日 シャンティイ競馬場(仏) 芝2400m

    1着 マカヒキ(牡3)
    2着 ミッドターム(牡3)クビ
    3着 ドーハドリーム(牡3)短アタマ
    「凱旋門賞の前哨戦」として開催されているレースで、3歳限定戦。本番は斤量の影響もあって3歳馬が有利と言われており、1990年代から2000年代初頭はこのレースの勝ち馬がそのまま凱旋門賞を勝つ年も多かったが、2006年のレイルリンク以降「ニエル賞→凱旋門賞」というローテーションでの優勝馬は出ていない。

    今年は5頭立てで開催され、4着馬は上記3頭の10馬身後方。実質的には3頭立てと言えるだろう。僅差だったため国内外で評価が割れているようだが、あくまでこれは出走全馬にとって「凱旋門賞の前哨戦」であり、マカヒキにとっては海外初戦。着差はともかく、馬場を苦にせず終いまで伸びて勝てたことは大きな収穫だったと言える。なおレース後に右後肢の落鉄が判明しているが、馬体への影響は今のところないとのことだ。

カリスマインタビュー

カリスマ・藤田伸二
凱旋門賞出走経験のある、元騎手ならではのレース見解!

──今週末にいよいよ凱旋門賞が行われます。まずは日本競馬と海外競馬の大きな違いは、どこにあるとお考えですか?

藤田:馬場の違いなんかはよく取り上げられるけど、俺が思う一番の違いは、馬、そして騎手に対してのレースに至るまでのストレスの掛かり方がまったく違うことだね。まず、同じ競馬でも日本と海外ではパドックからレースが始まるまでの時間の長さが、全然違うんだ。海外はパドックからスタートまでが、あっという間だよ。パドックの時間も短いし、馬場入りはレース発走の5分前ぐらい。だから馬に変なストレスが掛からない。ところが、日本だと馬場入りは通常のレースなら発走の15分前。GIなら20分も前から馬場入りをする。長いよな。寒い時なんて、かなりきついぞ(笑)。それに、競走馬は非常に繊細な生き物なんだ。だから、人の目にさらされることで、非常にストレスが溜まる。パドックの途中から、急にカリカリしてくる馬も多い。騎手だって、レースまでの時間が長いとストレスが溜まるんだ。輪乗りの時なんかも、アレコレと考えるしね。例えば、前を歩いている馬の歩様とか、入れ込んでる姿を見て、それまでに組み上げた戦術を変更しなきゃとか、いろいろ考えてしまうんだよ。

──藤田さんは凱旋門賞に騎乗経験がございますが、ご自身にとって、または日本のホースマンにとって、凱旋門賞とはどういうレースですか?

藤田:フランスには凱旋門賞、ドバイにはドバイワールドC、オーストラリアならメルボルンCなど、どこの国にもその国を代表する有名なGIレースがあるけど…

カリスマ・白井寿昭
海外GⅠウイナーを手がけた名伯楽ならではのレース見解!

──今週末にいよいよ凱旋門賞が行われます。先生ご自身、または日本のホースマンにとって、凱旋門賞とはどういうレースですか?

白井:歴史の重みを感じるレース。凱旋門賞という言葉の響きもそうだけど、やはり奥深いものがある。欧州のビッグレースといえば、イギリスのイギリスダービーやイタリアのミラノ大賞典などもあるけど、賞金面でみたらそう高くはない。そのあたりも含めて、ホースマンのかける思いが強い、名実共に欧州最大のレースと言っていいだろうね。

──先生は、管理馬のダンスパートナーでのヨーロッパ挑戦(ノネット賞、ヴェルメイユ賞)をはじめ、数多くの海外レースへチャンレンジしたご経験をお持ちです。日本のレースと違って、海外レースの難しさはどんなところにあるとお考えですか?

白井:いろいろあるけど、まずは馬自体の馬場適性や体調の変化。それに検疫や輸送の問題はもちろん、あとは現地でのケア(獣医、装蹄師など)。それから、受け入れ先の厩舎の選択、帯同馬をどうするかなども、当然考えておかないといけない事だね。それに『厩舎のなかで遠慮なく物を言える状況』を作っておくことも、とても重要。後は、厩舎関係者の作業や生活の状況の確保も、もちろん大切。厩舎関係者といえば、今年のマカヒキは大江調教助手が担当しているね。彼は…