Produced by 競馬のカリスマ

価値基準

【白井寿昭】東西金杯・シンザン記念・フェアリーS回顧(2018)

この記事を書いた人

広島県出身。厩務員、調教助手を経て1978年に調教師免許を取得した。相馬眼で『白井最強伝説』として広く親しまれている。通算795勝(中央775勝、地方・海外20勝、重賞42勝)

1/6(土) 京都11R芝1600m京都金杯

大外から直線一気の差し切りでブラックムーンが勝利。過去の京都金杯は内ラチ沿いを伸びてくる馬が多かったが、雨に祟られた昨秋の開催の影響が大きかったのか、今年の芝にグリーンベルトと呼ばれる部分はなかった。さすがというべきか、武豊君はそこを狙ってきたわけだ。

公開されているパトロールフィルムを見れば、ブラックムーンが通ってきた場所とそれ以外の部分の芝状態の違いがはっきりする。馬場の中ほどまでは蹴り上げた芝が飛び散っているが、ブラックムーンの通った大外はそれがない。それは彼が芝の荒れていない箇所を狙っているからだ。

京都の坂はゆっくり上り、ゆっくりと下るのが定石。当然、武豊君もそれを熟知しており、仕掛けるポイントは三分三厘と決めた乗り方。残り600mのところで誰よりも早く動き、他の馬の蓋をしながら外を上って行ったわけだが、この乗り方をされてしまうと他の馬はブラックムーンよりもいい場所を通ることが難しくなり、そこを通ろうと思えば、ブラックムーンよりも追い出しを待つことになってしまう。ブラックムーンは確かに切れたが、それを呼び起こしたのは武豊君で、誰が乗っても勝っていたというレースではなかったと私は考えている。

2着のクルーガー、3着レッドアンシェルも含め、それなりのハンデを背負って結果を出した上位馬は評価しなくてはならない。しかし、レースのレベルが高かったかというと、そこまでではなかったのではないだろうか。少なくとも、マイルCSの上位馬を脅かすようなパフォーマンスを見せた馬はいなかったと考えている。

 

1/6(土) 中山11R 芝2000m 中山金杯

ある程度のポジションから押し切りを狙った上位の2頭とそれ以下の馬との間には、明確な力量差があると考えていい。評価できるのは明け4歳の2頭のみだろう。

勝ったセダブリランテスはナリタブライアンやキズナなどを輩出したパシフィックプリンセスの系統。父はディープブリランテで母父はブライアンズタイム。瞬発力を武器にするタイプではなく、しぶとさを生かす競馬で真価を発揮する馬と考えてよさそうだ。この勝利が大舞台での活躍を約束するものではないが、これだけの馬格がありながら、いい位置をキープできるスピードとセンスがあるのは強みで、キャリアもまだ5戦しかない。1月の早生まれながら、今後の伸びしろにも期待できそうだ。

2着のウインブライトは5月生まれで父も晩成傾向の強いステイゴールド。ミスゲランを祖に持つ血統背景もしっかりしている。こちらも決め手勝負に課題を残しそうだが、まだまだ成長の余地がある馬。飛躍の1年とする可能性もありそうとの見解で締めておきたい。

 

1/7(日) 中山11R 芝1600m フェアリーS

中山の芝1600mは圧倒的に外枠が不利で、今回のレースを見ても外枠から位置を取りに行くことは難しいという事実を痛感させられる。1番人気に支持されたテトラドラクマにはそんな不運もあったか。

勝ったプリモシーンも外枠からのスタート。序盤は位置を取れなかったが、それを気にすることもなく、中団あたりを追走。勝負どころで徐々に動いていくという競馬を選択した。一度は2着馬に前に出られそうなシーンもあったのだが、坂下で一気に突き放した内容は上々。純粋に力の違いを感じるレースだったと思う。

いかにもディープインパクト産駒らしい切れとファストネットロック、ストラヴィンスキーから受け継いだスピード。ディープインパクト産駒の中でもハイレベルな素質馬というのが、今回のレースを見た私の印象だ。今年の牝馬路線にはそこまで大物のディープインパクト産駒がいなかったのだが、桜花賞を狙えるレベルの馬がいよいよ登場したと考えていいだろう。今回は中山のマイル戦で勝ったが、直線の長い阪神外回りのほうが同馬には向くだろう。その動向を注目したい馬だ。

 

1/8(月) 京都11R 芝1600m シンザン記念

勝ったアーモンドアイの母はフサイチパンドラ。彼女を管理した私の立場からすれば、ようやくフサイチパンドラの血にふさわしい大物を出してくれたかという気持ちだが、アーモンドアイとフサイチパンドラはタイプが少し異なっているように思う。

フサイチパンドラはサンデーサイレンスよりも母父のヌレイエフの影響を感じるスピードとパワーがセールスポイントの馬。一方、このアーモンドアイはフサイチパンドラよりもサイズがひと回り小さいこともあり、パワーではなく、切れを武器にしているように感じる。その切れはロードカナロアでも、キングカメハメハでもなく、フサイチパンドラの父であるサンデーサイレンスに近い。これが隔世遺伝というやつだろうか。

その勝ちっぷりから、今回のメンバーではワンランク上の能力を持っていたことは間違いないだろう。GIを勝てるレベルの馬かもしれない。実際、パドックで見せた雰囲気は素晴らしく、水平首で身のこなしも柔らかい。素晴らしい馬という印象を改めて持った。

しかし、それでも同馬を桜花賞最有力候補と呼べない理由。それは今回のレースでも見せてしまったゲート難だ。

少頭数で力の違いが大きいレースなら、そこまで問題にならないかもしれない。しかし、桜花賞のように多頭数で、実力も接近するレースではスタートのロスが大きく響いてくる。思い出すのは私が管理したダンスパートナー。彼女もゲート難を抱えた状態で桜花賞に挑み、出遅れが響いて2着に惜敗。非常に悔しい思いをした。あの教訓があるからこそ、他馬にハンデを与えるような状況ではいけない。単に能力があるだけではダメということを、声を大にして言っておきたい。

キタサンブラックのように…とまでは言わないが、常に能力を発揮できる状況を自ら作れること。これこそが真の強さと私は考えている。それを身につけることができるかどうかで、この馬の未来も大きく変わってくるのではないだろうか。

(2018年1月執筆)
---------------

-価値基準
-, ,