Produced by 競馬のカリスマ

喜び・感動

【競馬評論家・田原基成】「答えは14年間変わっていない」

この記事を書いた人

競馬予想の魅力に取り憑かれ10年以上。ファンにその魅力を伝え続ける「競馬ストーリーテラー」。予想に対して謎ときに近い魅力を感じており、ローテーション・血統の分野では競馬本を執筆するほど。また、先につながる視点や情報を予想に組み込んでいることから「見ているだけで勉強になる」と評判で、単発にとどまらない長期的な目線での予想力向上に一役買う。本では伝え切れなかった部分を余すことなくお伝えします。

※このコラムは読者の方から頂いた質問に答えた内容です。

【質問内容】
「はじめまして。私はかわいくて強いダイワスカーレットが大好きだったのですが、カリスマの皆さまが一番好きな馬を知りたいです!」

-----------

「一番好きな馬」という問いに対する答えは14年間変わっていない。

タップダンスシチー。

佐藤哲三とのコンビが堪らなく好きだった。

相手がどの馬であろうが、自身の戦法に一切の迷いはない。
「俺について来れるヤツはいるのか?」と言わんばかりにロングスパート一閃。
真っ向勝負を挑んだ馬はスタミナを根こそぎ奪われる。
「肉を切らせて骨を断つ」を地で行く競走馬と言えるだろう。

テイエムオペラオー、ナリタトップロード、スティルインラブ……
タップダンスシチー以外に好きな馬を挙げると上記の馬が思い浮かぶ。
私は“人馬一体”を感じるコンビに惹かれる傾向があるようだ。

ところが、昨今の競馬では乗り替わりが当たり前。

「この馬といえばこの騎手」という関係にあるコンビが明らかに減った。
私はそこに一抹の寂しさを感じてしまう。
大舞台になればなるほど発生する乗り替わり……
まず頭によぎるのはそこまで育て上げた前任者の想いだ。

メイショウサムソンと石橋守。
オルフェーヴルと池添謙一。
ゴールドシップと内田博幸。

最終的には自身の手に帰ってくることになったとはいえ、
乗り替わりの通告を受けたとき、彼らはどんな心境だったのだろうか。
「本命馬とは、レースにおける物語の主役である」というのが私の予想スタイル。
心揺さぶるバックボーンに対し、想いを乗せて渾身の印を打つ。
その想いに反する乗り替わりに対して、少なくとも私の心は揺さぶられない。
仮に本命を打つとすれば、前任者の手に帰ってきたときだ。

余談だが、私が現役で“人馬一体”を感じるコンビを挙げるとすれば、
マルターズアポジーと武士沢友治ということになる。
武士沢友治は同馬の父ゴスホークケンの引退レースに騎乗した騎手。
快速馬として鳴らした父の遺伝子を受け継いだ息子は、
デビュー以降一度もハナを譲っていないという個性豊かな逃げ馬だ。

お世辞にも煌びやかとは言えない血統、厩舎、騎手……そのすべてが私を惹きつける。
どことなくタップダンスシチーに似た雰囲気すら感じるこの馬は、
今後“15年目の浮気”に私を誘う存在なのかもしれない。

(2017年3月執筆)
---------------

-喜び・感動
-