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【海外コラム】ハイレベルな英仏のクラシック

今週の火曜日、イギリスのアスコット競馬場で英国王室主催のロイヤルアスコットが開幕した。日本からも昨年、エイシンヒカリとその帯同馬であるエイシンエルヴィンが参戦したことで話題を集めたこの開催だが、今年は残念なことに日本からの遠征馬がいない。そこで、今回は既に終わった英仏2ヵ国のクラシック。今月上旬に行われた英仏のダービーと英オークス、そしてつい先日終わった仏オークスについて触れたい。

まず、日本時間3日深夜に行われた英ダービーから。結果については既にご存知の方も多いと思うが、6頭出しとなったエイダン・オブライエン厩舎の中でも下位から2番目、全体でも18頭中16番人気という低評価だったウイングスオブイーグルスが、ゴール寸前のところで人気馬をまとめて差し切って優勝し、波乱を演出した。誰もが驚く結果になったのだが、ウイングスオブイーグルスの勝ちタイムは2000年以降のレースでは3番目の好時計である。同馬より速いタイムでダービーを制したワークフォースとゴールデンホーンが、いずれも3歳で凱旋門賞を制していることから、ウイングスオブイーグルスも注目を集める存在になるかもしれない。

そして、このレースにおいて何より話題になったのは、ウイングスオブイーグルスの鞍上を務めたP.ベギー騎手だ。レース後、同騎手についてはアイルランドで騎手デビューしたものの、結果を残すことができずにオーストラリアへ移籍することになったことや、その移籍先でコカイン使用による騎乗停止処分を受けたこと、再起を果たすべくアイルランドへ戻り、オブライエン調教師の下で管理馬の調教をつけていたことなど、さまざまなエピソードが明らかになった。おそらく、次走に予定されている愛ダービーでは、オブライエン厩舎の主戦であるライアン・ムーア騎手がウイングスオブイーグルスに騎乗すると思われるが、ファンの思いとしてはベギー騎手のシンデレラストーリーをまだまだ見たいところだろう。契約を重んじるヨーロッパだけに仕方のないことではあるが、少し残念な話である。

英ダービーの翌日、4日に行われた仏ダービーはクリスチャン・デムーロ騎手騎乗のブラムトが勝利した。仏2000ギニーを僅差で制した同馬が、ここでも勝負強さを発揮して2冠を達成。着差は僅かだったが、出遅れた上に4角後方2番手から外を回って差し切ったレースぶりは、着差以上に強さを感じさせるものだった。陣営は秋の凱旋門賞参戦を示唆するコメントを残していることから、今後は日本馬にとっても厄介な相手になるかもしれない。また、デムーロ騎手はラクレソニエールで制した昨年の牝馬2冠に続き、今度は牡馬で2冠を手にしたことになる。ラクレソニエールは昨年、直前のアクシデントによって凱旋門賞回避を余儀なくされただけに、今年こそはという想いがあるはずだ。

一方の牝馬、英ダービーの前日に行われた英オークスは、直前に天候が急変して雷雨の中での争いになった。そしてこの結果、アメリカから参戦したケンタッキーオークスの2着馬ダディーズリルダーリングが、返し馬の際に雷に驚いて制御不能になり、競走除外になるというアクシデントが起こったが、レースは直線で人気馬2頭による叩き合いに。最後はランフランコ・デットーリ騎手騎乗のエネイブルが、ライアン・ムーア騎手騎乗の1番人気馬ロードデンドロンに5馬身差をつけて圧勝したが、名手2人による追い比べは見応え十分という内容だった。

勝ったエネイブルは2011年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSなどGIを2勝したナサニエルの初年度産駒。次走は愛オークスに向かうようだが、ここも勝つようであれば凱旋門賞の有力候補に名を連ねることになるだろう。実際に英オークスでのレースぶりは、それほどまでに高い能力を感じさせるものだった。

対照的に、敗れたロードデンドロンは英1000ギニーに続いての2着。またしてもクラシックのタイトルに届かなかった同馬は、レース後にオブライエン調教師が示唆した通り、中1週で仏オークスに参戦することになる。

こうして迎えたのが先週末の仏オークスである。人気を集めたのは英オークス馬エネイブルと同じアブドゥラ殿下の所有馬で、管理するジョン・ゴスデン調教師、鞍上のデットーリ騎手という組み合わせまで同じだったシャッタースピード。英オークスの前哨戦であるGIIIミュージドラSを3戦無敗で制した後、距離適性を考慮してこちらへ回ることになったが、今季初戦となった2走前のレースではエネイブルを3着に退けており、能力的にはこちらが上と思われていた。

2番人気に支持されたのは、3度目の正直でクラシックのタイトルを狙うロードデンドロン。この2頭に名牝ゴルディコヴァの娘で、デビュー2連勝でGIIIクレオパトル賞を制したテラコヴァが3番人気で続き、上位人気3頭による争いが期待された。しかし、ロードデンドロンはレース中に鼻出血を発症して競走を中止。オブライエン調教師は暑さが影響したというコメントを残したが、マインディングやセブンスヘブンに続く有力馬のトラブルに厩舎の流れの悪さを感じた。

また、残る人気馬2頭もシャッタースピードが4着、テラコヴァが3着に敗れ、フランスの牝馬クラシックは1000ギニーに続いて波乱の結果に終わった。勝ったのは8番人気のセンガ。仏1000ギニーの前哨戦のひとつであるGIIIグロット賞の勝ち馬ではあったが、本番の1000ギニーで11着に敗れていたほか、前走のGIIサンドリガム賞でも5頭立て3着に終わっていたため、評価を大きく落としていた。同馬にとっては次戦が真価を問われる一戦になるだろう。

こうして幕を閉じた英仏の春のクラシック。人気馬が敗れ、波乱が起きたレースもあったが、全体的には昨年の3歳世代よりもレベルが高いように感じた。今後、夏から秋にかけて3歳勢が古馬勢と対戦する機会も増えてくるはずで、その結果が今秋の凱旋門賞を占う上でも重要になってくる。今回紹介したクラシックホースの名は、ぜひ記憶にとどめておいていただきたい。


※今週の更新を持ちまして『特選 海外競馬情報』はいったん連載を終了とさせて頂きます。ご愛顧いただきまして誠にありがとうございました。